学会賞

園芸学会年間優秀論文賞 Hort. J. 89(3): 216-224.

Hort. J. 89(3): 216–224.

Genetic and Gene Expression Analysis of Berry Sugar Composition

in a Sucrose-accumulating Grapevine

Mikio Shiraishi, Michio Hamada

Fukuoka Agricultural and Forestry Research Center, Chikushino 818-8549, Japan

 

<研究内容>

生食用ブドウ果実における糖組成の遺伝および遺伝子発現様式を解明するため,還元糖集積型およびスクロース集積型ブドウ品種・系統について調査した.還元糖集積型は,フルクトースおよびグルコースが主要糖で微量のスクロースが存在する.スクロース集積型は,フルクトースおよびグルコースに加えて多量のスクロースが存在する.二倍体のS1およびF2集団における分離比から,スクロースの集積は単一因子による潜性遺伝様式に従う.還元糖集積型(+/+,+/suc)およびスクロース集積型(suc/suc)の品種・系統を用いた成熟期間中の糖集積に関与する鍵酵素遺伝子の発現解析では,両集積型とも果実の成熟開始にともなう糖含量の急激な増加と連動してスクローストランスポーターおよびスクロースリン酸合成酵素遺伝子の発現量が増加し,両集積型間で有意差はなかった.また,細胞壁型インベルターゼ遺伝子の発現は,成熟期間を通じて両集積型間で有意差がなかった.さらに,液胞型インベルターゼ遺伝子は,両集積型とも果実の成熟に従って同様な発現低下が認められたのに対し,スクロース合成酵素(スクロース分解を触媒)遺伝子はスクロース集積型でのみ有意な発現低下が認められ,スクロースの急激な蓄積と一致した.以上の結果から,スクロース合成酵素はスクロース集積型ブドウ果実において糖代謝上重要な役割を果たすことが示唆された.

 

<授賞理由>

本論文で著者らは,生食用ブドウの還元糖集積型品種およびスクロース集積型品種を材料として二倍体のS1 およびF2 集団を作成し,分離比からスクロースの集積は単一因子による潜性遺伝であることを示した.また,還元糖集積型およびスクロース集積型品種における成熟期間中の糖集積に関する鍵酵素遺伝子の発現解析を行い,スクロースの急激な蓄積とスクロース合成酵素(スクロース分解を触媒する)遺伝子の発現低下が一致することを見いだした.以上のように,本成果によって糖組成という重要な果実形質に関して遺伝形式や遺伝子発現についての理解が大きく進展したことからHort J年間論文賞に値する.

                         

 

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