園芸学研究 22(3): 207-215. 二ホンナシの受粉樹における花粉効率を高める手法について(第一報) 島田智人・柴崎 茜・前島秀明・浅野 亘 埼玉県農業技術研究センター(久喜試験場) 346-0037 埼玉県久喜市六万部 |
<研究内容>
ニホンナシ花粉の国内自給率向上のため花粉採取効率を向上させる技術を検討した. 腋花芽利用品種における樹形は,低樹高で主枝先端を隣接樹にジョイント接ぎ木する低樹高ジョイント仕立てが,直線的な樹形であることや,花蕾採取作業に脚立を要さないことなどから,立木仕立ておよび ,棚仕立てより時間当たり花蕾採取量が多く, 採取効率が向上した.また,低樹高ジョイント仕立ては,株仕立てや,低樹高でジョイント接ぎ木を行わない場合より,中庸な新梢の発生が多く,樹列当たりの花芽数が多くなることが明らかになった.採取方法は,選択採取より一斉採取が,3分咲きや 7分咲きより5分咲きでの採取が,時間当たり純花粉採取量および花粉発芽率の点で効率的であることが明らかになった.また,'新興'における5種の植物成長調節剤の効果を検討したところ,ジベレリン生合成阻害剤であるダミノジッド,パクロブトラゾール,およびエチレン活性剤であるエテホンの処理が,腋花芽着生率に有効であることが確認された.
<受賞理由>
自家不和合性を有するニホンナシでは人工授粉が必須であるが,国内のみでの花粉の供給は不十分であり,近年,海外から多くの花粉を輸入していた.しかし,中国での火傷病の発生を受けて花粉の輸入が禁止され,国内での花粉供給体制の整備が喫緊の課題となっている.当研究はニホンナシの花粉採取効率の向上のために樹形,花蕾採取に適した花蕾ステージ,採取方法,植調剤の使用方法,作業効率等を検討し,花粉採取効率の向上に資する技術を開発した.当研究は花粉の自給率向上のための具体的対策を示した優れた研究成果である.
<研究概要>