園芸学研究 22(3): 197-206. シンテッポウユリとテッポウユリの交配による無花粉テッポウユリ類系統の育成 今給黎征郎 1・岡崎桂一 2・横井直人 3・齋藤隆明 3
1 鹿児島県農業開発総合センター 899-3401 鹿児島県南さつま市金峰町大野 2 国立大学法人新潟大学自然科学系 950-2181 新潟県新潟市西区五十嵐 3 秋田県農業試験場 010-1231 秋田県秋田市雄和相川字源八沢 |
<研究内容>
シンテッポウユリ無花粉品種‘あきた清ひめ’とテッポウユリ品種の交配育種により,F2世代で無花粉の系統が得られることを明らかにした.この無花粉に関する遺伝子は潜性遺伝子であると推察される.F2世代における実際の無花粉株率は,種子の発芽率,抽苔率および開花率の影響を受け,変動する.育成された系統は,完全無花粉の性質に加えて,シンテッポウユリの生育旺盛な性質を有し,従来のテッポウユリ品種より小さな球根で切り花生産ができる新たな特性を有する.
<受賞理由>
ユリは花卉産業において重要な作目であるが,花粉が花弁,衣服等を汚すことから消費者に敬遠される傾向がある,著者らは無花粉ユリを育成するため,シンテッポウユリ無花粉品種‘あきた清ひめ’とテッポウユリ品種の交配育種によりF2世代で無花粉の系統が得られることを明らかにした.‘あきた清ひめ’の無花粉性の遺伝様式を明らかにするとともに無花粉率に影響する諸要因を解明し,シンテッポウユリの生育旺盛な性質を有した無花粉テッポウユリ類系統を育成した.当論文は花卉産業の振興に資する重要な研究成果を含むものである.
<研究概要>
左:無花粉(短花糸)‘24-26’,中央:無花粉(長花糸)‘29-21’,右:有花粉‘ひのもと’
第1図 テッポウユリ無花粉系統と一般的な有花粉品種の雄ずいの形状
第2図 促成3月出し栽培での有望系統‘29-16’