学会賞

園芸学会年間優秀論文賞 Hort. J. 92(4): 424–430.

Hort. J. 92(4): 424-430.

Modeling the Relationship between Apple Quality Indices and Air Temperature

Toshihiko Sugiura1*, Noriaki Fukuda2, Taiga Tsuchida3, Mio Sakurai3

and Hiroyoshi Sugiura1

 

1Institute of Fruit Tree and Tea Science, National Agriculture and Food Research Organization (NARO),

Tsukuba 305-8605, Japan

2Apple Research Institute, Aomori Prefectural Industrial and Technology Research Center, Kuroishi 036-0332, Japan

3Nagano Fruit Tree Experiment Station, Suzaka 382-0072, Japan

<研究内容>
 気候変動が水稲など主要な作物の収量に与える将来の影響については広く研究されているが,園芸作物の品質変化と気候変動の関係は,過去のデ-タ蓄積が十分でなく,また品質決定プロセスが複雑なため定量化されておらず,その将来の変化予測は世界的にみても,ほとんど行われていない.そこで,リンゴ樹への温度処理実験によって,各品質指標の感温特性を定量化した.また,この結果とリンゴ主産地における品質に関する栽培記録を用いて,気温からリンゴ品質を推定するモデルを開発した.温度処理実験では,17.3~25.6℃の一定温度に設定したガラスチャンバーにより,リンゴ‘ふじ’のポット栽培樹を,満開110日後から栽培し,満開170 日後に果実品質を測定した.果実の酸含量,表面色,地色,デンプン消失指数,みつ入り指数は,処理温度が高いほど有意に低くなり,これらの値と気温との関係は,直線で近似することができた.一方,糖度および硬度は,気温による明確な影響が認められなかった.青森県と長野県の試験圃場の50年間(1970~2019年)の栽培記録において,満開110日後から60日間の平均気温と満開170 日後の品質指標の関係は,温度処理実験と同様の傾向があり,その直線回帰式の傾きは,温度処理実験と圃場観測との間で有意差はなかった.以上の結果を用いて,気温から果実の品質を推定するモデルを開発した.このモデルは,日平均気温から求められ日々の各品質指標の変化量を積算することで,毎日の果実の各品質指標の値を推定するものである.このモデルは,将来の長期的な気温上昇がリンゴ品質に与える影響を評価するために有用であると考えられる.

<授賞理由>
 昨今の夏秋期に気温上昇が認められるように,気候温暖化の影響は今後もさらに進むと考えられる.著者らはリンゴを材料にガラスチャンバーによる温度試験を行い,果実の糖度,酸含量,硬度,表面色,地色,デンプン消失指数,みつ入り指数といった品質と温度との関係を明らかにしている.さらに,青森県と長野県の50年にわたる栽培記録に基づいた品質データとも重ね合わせたうえで気温から果実の品質を推定するモデルを開発した.ガラスチャンバーによる実験だけでなく,栽培現場での長期にわたる栽培記録に基づいた実用的なモデルの開発は将来必ず訪れる気温上昇の対策に大きく貢献する論文として高く評価された.

<研究内容>

温度処理実験(チャンバー)および圃場(青森県,長野県)における満開170日後の果実品質と,直前60日間の平均気温の関係

 

 

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