学会賞

園芸学会年間優秀論文賞 園芸学研究 20(1): 39-47.

園芸学研究 20(1): 39–47.

タマネギ95品種から取得した形質データに基づく多変量解析

塚崎 光・奥 聡史・本城正憲・山崎 篤・室 崇人

国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構東北農業研究センター

020-0198 岩手県盛岡市下厨川字赤平

<研究内容>

 タマネギは,年間130万トン余り生産される重要な野菜品目である.我が国で栽培されるタマネギは,主に北海道向けの春まき(晩生)品種と本州・西南暖地向けの秋まき(早生)品種に分化しており,これらの特性は大きく異なることから,両品種群を同時に栽培してその特性を比較することは難しかった.そのような中で,農研機構東北農業研究センターが中心になって開発した新たな春まき作型では,両品種群を含む幅広い品種を栽培することが可能であることが判明し,今後はこの作型に適応した品種を開発・選定することが望まれている.しかし,これまで東北地域において,品種選抜の基礎となる気象条件を反映した品種・系統の特性データは得られていない.そこで本研究では,海外の品種を含めた遺伝的に多様な95品種・系統を用いて,各2回の春まき・秋まき作型により計50形質データを取得した.春まきと秋まきの間で一部の形質を除いて有意な相関が認められたことから,秋まき作型において、積雪や暖冬といった気象条件による安定的な評価が難しい地域では,栽培が容易で年次間差の小さい春まき作型によって評価できることが示された.各作型において2か年調査した21形質の平均値を中心に30形質データを用いた主成分分析により,主に生育の早晩に特徴付けられる第1主成分,主にりん茎の形質に特徴付けられる第2主成分を見出された.これらの主成分スコアに基づいた散布図およびクラスター分析の結果は,従来の品種群を概ね反映したが,いくつかの秋まき早生品種は,秋まき中生品種が集中する位置にプロットされた(図a).また,30形質データに基づくクラスター分析により,4つのグループに分類でき,国内品種に関しては,グループI~Ⅲにほぼ対応した(図b). 

 

 図 計30形質データに基づく品種分類  各品種名に基づいて,秋まき品種群(早生),秋まき品種群(中生~晩生),春まき品種群,海外品種群に分類した.  (a):主成分分析により得られた主成分スコアに基づいた散布図  (b):クラスター分析(Ward法)による分類   クラスター分析により、I~IVまでの品種群に分類できる.このうち国内品種に関しては、早生(グループI),中生(Ⅱ)および晩生(Ⅲ)にほぼ対応する.

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