学会賞

園芸学会年間優秀論文賞 Hort. J. 90(4): 428–449.

Hort. J. 90(4): 428–449.

Information on Flower Coloration and Pigmentation in Current Carnation Cultivars for Use in Future Flower-color Breeding

Hayato Morimoto1, Yuka Ando2, Hiroaki Sugihara2, Takako Narumi-Kawasaki1,2, Takejiro Takamura1,2, Seiichi Fukai1,2

1The United Graduate school of Agricultural Sciences, Ehime University, Matsuyama 790-8566, Japan

2Faculty of Agriculture, Kagawa University, Miki, Kagawa 761-0795, Japan

<研究内容>
 カーネーションは,花き市場において最も重要な花き品目のひとつであり,その花色の多様性は魅力的な園芸的形質となっている.ここ数十年で消費者の習慣や嗜好の変化に応じてカーネーション品種の多様化が増してきている.しかしながら,カーネーションにおける花色に関する情報整理は不十分のままである.本研究では,現代のカーネーション切り花の花色特性を明らかにすることを目的とし,現在流通しているスタンダードカーネーション56品種とスプレーカーネーション54品種について花模様や花色といった花の見た目や花色素組成の観点から評価を行った.視覚的な花色の調査では,花模様は5つの主要な花模様と2つのマイナーな花模様に大別され,主要な花模様は,さらに16のサブタイプに分類された.また,花色グループは,黄色,薄茶系色,橙色,赤色,暗赤色,濃桃色,桃色,薄桃色,紫系色,薄紫色,ライラック色,藤色,青紫系色,薄緑色,白色の15グループに大別された.花色素分析では,花色は,ペラルゴニジン系アントシアニン,シアニジン系アントシアニン, 黄色系フラボノイド色素のカルコノナリンゲニン 2’-グルコシド,緑色を示すクロロフィルの組み合わせによって決定されることを明らかにした.調査対象サンプルの中に, メタリックカラーやベルベット質感を与える品種も含まれており, それら花色は花弁表皮細胞の液胞内におけるアントシアニンの凝集度合いや花弁表皮細胞の形によって変化していた. 以上の網羅的な花色評価の結果,花色数,花模様の種類やその組み合わせ,花色素や花弁の質感との組み合わせから考えるとさらに多くの品種が生まれることが期待される.

<授賞理由>
 本論文では,カーネーション切り花の花色特性を評価することを目的とし,カーネーション計110品種の花色を測定し7つのタイプに分類している.また,HPLCにより花の色素を分析し,花色がアントシアニン・カルコノナリンゲニン・クロロフィルの組成と量によって決まることを明らかにしている.さらに,顕微鏡による観察からAVIや表皮構造が光沢やビロード様の質感を生み出していることも示唆している.このように本論文は,現在流通しているカーネーション品種の花色構成情報を整理するとともに,将来の育種にもつながる知見を含む優れた論文である.

. 現在流通している多様な花色を示すカーネーション品種群

 

 

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