学会賞

園芸学会年間優秀論文賞 Hort. J. 90(2): 172–180.

Hort. J. 90(2): 172–180.

Noninvasive Diagnosis of Seedless Fruit Using Deep Learning in Persimmon

Kanae Masuda1, Maria Suzuki1, Kohei Baba2, Kouki Takeshita2, Tetsuya Suzuki3, Mayu Sugiura3, Takeshi Niikawa3, Seiichi Uchida2, Takashi Akagi1

1Graduate School of Environmental and Life Science, Okayama University, Okayama 700-8530, Japan

2Department of Advanced Information Technology, Kyushu University, Fukuoka 819-0395, Japan

3Gifu Prefectural Agricultural Technology Center, Gifu 501-1152, Japan

<研究内容>
 近年,果実内部形質に関する非破壊診断の需要は高くなってきているが,その診断技術の導入コストは依然として高く,実施手法・施設も限定されている.最近の深層学習技術の進歩は目覚ましく,様々な形質に対して写真画像のみから高精度の分類や診断が可能になっており,ニューラルネットワークの逆伝播によってその判断根拠も可視化することが出来る.ここでは,カキ果実の外観写真からの無核性診断を目的として,4つの畳み込みニューラルネットワーク(CNN)モデルを適用した.カキ‘富有’果実における果頂部側からの写真画像599枚より,最大85%の精度で無核・有核性を判別可能であり,層構造の単純なVGG16モデルが最も高精度な89%の判別率を示した.判別における確信度の分布から種子数の推定も可能であることが示唆された.さらに,「説明可能なAI」の代表手法であるGrad-CAMやGuided Grad-CAMの適用により,無核・有核性の判断根拠領域をカキ果実画像中に可視化した結果,果頂部周辺の微細な起伏パターンを捉えていることが示唆された.本結果は,無核性や種子数の非破壊予測の新手法となるだけでなく,我々がこれまでに把握しきれていない無核性の特徴を深層学習の適用によって新たに捉えられることを示している.

<授賞理由>
 品質を評価する上で,非破壊での測定は特に流通の現場などでは重要である.本論文は,近年進歩が著しいAI技術である深層学習により,カキ果実において,内部形質である無核性に関する非破壊診断ができることを示すとともに,種子数の推定も可能であることを示唆したものである.さらには,無核・有核性の判断根拠である外観的な特徴をも明らかにしている.本研究結果は無核性や種子数の非破壊予測の新手法を提示したのみならず,深層学習による果実品質の評価の汎用性をも示したことになる.本論文はAI技術の園芸現場への今後の波及を促進させるものであり,価値あるものといえる.

種無し果実を判断する深層学習技術の利用とその判断根拠領域の可視化

 

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