園芸学研究 19(3): 269–275. Positron-emitting Tracer Imaging System (PETIS)法を用いた トマト果実への光合成産物の転流に 果実直下の側枝葉が及ぼす影響の評価
塚本崇志 1・石井里美 2・七夕小百合 2・鈴井伸郎 2・ 河地有木 2・藤巻 秀 2・草川知行 1
1 千葉県農林総合研究センター 266-0006 千葉市緑区大膳野町 2 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 370-1292 群馬県高崎市綿貫町 |
野菜や花卉などの作物においては仕立て方の研究は遅れている.ハウスなどの環境において,仕立て方を改善することにより,光合成効率や転流を最適化させることは重要な課題であるが,拠り所となる知見は少ない.これまで,側枝葉を残す栽培管理技術が高糖度果実の生産にとって有効であることは示されていたが,メカニズムは不明であった.著者らは非破壊で植物体内の物質動態を可視化できるPETIS 法を用いて,第1果房へ蓄積される光合成産物の由来を調査したところ,44.6–80.1% が側枝葉から転流していることを明らかにした.この知見は,トマトの仕立て方に対する新しい技術を開発する基礎的知見であり,園芸学において学術性の高い論文であると言える.