学会賞

園芸学会年間優秀論文賞 園芸学研究 18(4): 363-371.

                  園芸学研究 18(4): 363-371.
TYLCV感染性クローンを利用した簡易接種法による
 抵抗性トマト系統の選抜
 
 鈴木良地・加藤政司・福田至朗・大藪哲也・坂 紀邦
愛知県農業総合試験場
480-1193 愛知県長久手市岩作三ケ峯

<研究内容>
 Tomato yellow leaf curl virus(TYLCV)はタバココナジラミによって媒介され,葉の黄化,巻き,小型化,萎縮といった症状を示し,甚大な減収の要因となるトマト黄化葉巻病を引き起こす.この病害の対策として,トマトの栽培現場ではTYLCV耐病性の品種が導入されている.本研究では,耐病性品種の育成に不可欠な検定法として,TYLCV感染性クローンを用いた簡易なアグロイノキュレーション法による接種法(感染性クローン簡易接種法:Yamaguchiら,2013)が,既存のトマト品種および育成系統のTYLCV抵抗性評価に活用できるかを明らかにした.また,従来のコナジラミを使ってTYLCVを接種する方法で多大な労力を要するコナジラミ接種法との比較から,感染性クローン簡易接種法の有効性を検証した.イスラエル系統(長崎型)およびイスラエルマイルド系統(愛知型)のTYLCV感染性クローンをトマト幼苗に接種し,8週後までの病徴の推移を調査した.また,loop-mediated isothermal amplification(LAMP)法によりウイルス蓄積量を定量した.その結果,特にイスラエル系統の感染性クローンを接種した場合に,耐病性および抵抗性のトマトと感受性のトマトで,病徴およびウイルス蓄積量に顕著な差が確認された.また,感染性クローン簡易接種法はコナジラミ接種法と同等の病徴およびウイルス蓄積量の推移を示すことも確認された.このことから,耐病性検定において感染性クローン簡易接種法は耐病性および抵抗性トマト系統のスクリーニングに活用でき,コナジラミ接種法に代替可能と考えられた.

<授賞理由>
 TYLCVはトマトの重要病害であり,その抵抗性育種の過程において信頼性の高い選抜方法が求められている.本論文は,TYLCVの感染クローンを構築し,これを用いて感染率,病徴,ウイルス蓄積量などを評価し,従来のコナジラミ接種法と比較して,信頼性の高い方法を確立したものである.重要なTYLCV抵抗性育種の選抜過程において,簡便で迅速な新手法の実用化に資する本論文は,園芸科学において技術的に優れた内容の論文である.

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