学会賞

園芸学会年間優秀論文賞 Hort. J. 88(4): 521–534.

Hort. J. 88(4): 521–534.
Breeding for Long Vase Life in Dahlia (Dahlia variabilis) Cut Flowers
 
Takashi Onozaki, Mirai Azuma
 
Institute of Vegetable and Floriculture Science, NARO, Tsukuba 305-0852, Japan

<研究内容>
 日持ち性は観賞植物における最も重要な形質の一つである.ダリア(Dahlia variabilis)切り花の日持ち性はとても短く,日持ち性の遺伝的な改良が強く望まれている.そこで,従来育種技術を用いたダリアの日持ち性の改良を2014年に開始した.ダリア24品種の日持ち性に有意で大きな品種間差異が認められた.9品種(‘祝盃’,‘凜華’,‘ミッチャン’など)を日持ち性良の品種(日持ち指数1),8品種(‘かまくら’,‘アジタート’,‘紅風車’など)を日持ち性並の品種(日持ち指数2),7品種(‘銀映’,‘ポートライトペアビューティ’,‘夢水蓮’など)を日持ち性劣の品種(日持ち指数3)と分類した.22品種を最初の育種材料として,2014年から2018 年まで,3世代にわたり日持ち性による選抜とその選抜系統間での交配を繰り返した結果,第1世代から第3世代の全実生の平均日持ち日数が1.7日増加した.以上の結果から,日持ち性が短い代表的花き品目のダリアについて,選抜と交配による日持ち性の改良が可能であることが明らかになった.日本の白色主要品種‘かまくら’の日持ち日数は,蒸留水で5.0~6.2日,イソチアゾリノン系抗菌剤CMIT/MITで6.0~6.8日,GLA(1%グルコース,0.5 mL·L−1 CMIT/MITおよび50 mg·L−1 硫酸アルミニウムから構成される品質保持剤)で6.0~7.6日であったが,最終選抜した6系統の日持ち日数は,蒸留水で6.2~12.0日,CMIT/MITで6.6~10.2日,GLAで9.4~13.6日であった.特に,第2世代選抜系統の606-46は‘かまくら’よりも安定して長い日持ち日数を示した.第2世代の日持ち性の優れる交配組合せの親系統の育成や,第3世代のすべての交配組合せの親系統の育成には,共通して良日持ち性品種‘ミッチャン’が使われていた.さらに,最終選抜した良日持ち性6系統は共通して‘ミッチャン’の後代であった.これらの結果により,‘ミッチャン’にはダリアの良日持ち性に関与する何らかの遺伝子が存在し,また,その良日持ち性は遺伝することが強く示唆された.

<授賞理由>
 本論文は,ダリア切り花における花持ち性を向上させるための,育種材料の選別を行った論文である.ダリアの日持ち性をターゲットとした育種は生産現場からの要請が多くあるが,本論文の育種例が初めての報告となる.本研究では3世代にわたる交雑・選抜を繰り返すことにより,花持ち性の延長に関わる遺伝子の存在を明らかにした,重要性の高い報告であると言える.以上のことから本研究は,今後の切り花日持ち性を指標とした育種への貢献が大きい論文である.

                      

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