学会賞

園芸学会年間優秀論文賞 Hort. J. 88(3): 364–372.

Hort. J. 88(3): 364–372.
Harvesting Two Heads from One Stock of Broccoli (Brassica oleracea L. var. italica) ‘Yumehibiki’ by Pinching the Shoot Apical Bud in Autumn Cropping
 
Megumu Takahashi1, Takayoshi Ohara2, Fumio Sato1, Yuka Nakano1, Hidekazu Sasaki1
 
1Institute of Vegetable and Floriculture Science, NARO, Tsukuba 305-8519, Japan
        2Institute of Vegetable and Floriculture Science, NARO, Tsu 514-2392, Japan

<研究内容>
 ブロッコリーは頂花蕾収穫後に側枝由来の花蕾(側花蕾)が発生するが,側花蕾は小さいために一般的には利用されず,ブロッコリーは通常1株から1つの頂花蕾のみが収穫される.本研究は,秋冬作において,ブロッコリーの茎頂を切除し,側枝のみの2本仕立て(V字仕立て)によって,1株から直径12 cmの花蕾を2つ収穫する技術の確立を目的とした.まず,茨城県つくば市の試験場(Field 1)においてブロッコリー品種‘夢ひびき’の各葉位における腋芽の存在確率(PA)を調べた.第5葉から第8葉にかけてPAが高く,各葉位のPAを積算した値(IPA)は最終的に4.7となった.続いて,第 3,5,7,9,11,13,15葉齢で実際にV字仕立てをして収量を調査したところ,第7~11葉齢でV字仕立てすることで,可販品収穫本数は対照区と比較して有意に増加し,第11葉齢で対照区の61%増となった.その一方,V字仕立てをするステージが遅くなるにつれ収穫時期は遅れ,第11葉齢以降では低温障害による品質低下が発生した.本栽培技術の地域適応性を調べるため,別の3試験地において9~11葉齢でV字仕立て行った場合の収量を調査した.その結果,茨城県つくばみらい市(Field 2)と奈良県宇陀市(Field 3)でそれぞれ69%,62%の増収となったが,三重県津市(Field 4)では増収効果が小さかった.これら試験地の栽培条件・気象条件の比較によって,日最低気温が約0°Cを下回る前に,慣行栽培と比較して有効積算温度(EHUS)をさらに約300°C·day確保できるように早めに定植することでV字仕立てでの増収が可能となること,また,堆肥などによる長期の肥効と排水性が重要である可能性が示された.以上の結果より,V字仕立て栽培によって,広い地域で可販品収穫本数を60%以上増加させることができると結論づけた.

<授賞理由>
 従来のブロッコリー栽培では1株あたり1つの頂花蕾を収穫するのが一般的であった.本論文は,ブロッコリーの頂花蕾を摘芯して側花蕾2つを収穫する手法を提案し,この方法による花蕾収穫のタイミングや収量・品質について明らかにしたものである.これまでに,側枝花蕾を収穫ターゲットにするV字仕立て栽培はいくつか試行されていたが、花蕾サイズが不十分であった.一方で,本研究では,各葉位の腋芽存在確率を根拠として側枝を選択し,花蕾が可販サイズに発達できることを明らかにした.さらに,地域適応性を調べるために,各地区で実証試験を行い,増収効果の要因を解析した.このように,本論文は実用的有用性だけでなく栽培生理学的価値も高い論文である.

 「収穫時期のV字仕立て株の様子(見やすいように葉は取り除いてある)」

 

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