学会賞

園芸学会年間優秀論文賞 園芸学研究 18(4): 349-361.

            園芸学研究 18(4): 349-361.
岩手県盛岡市に分布するリンゴ黒星病菌(Venturia inaequalis)レース同
定の試みおよびリンゴ‘あかね’のリンゴ黒星病抵抗性に関与するQTL
 の同定
森谷茂樹1・後藤 聡2・久保 隆2・國久美由紀3・田沢純子2
工藤 剛2・葛西 智2・工藤 悠2・岡田和馬1・山本俊哉3
深澤(赤田)朝子2・初山慶道2・阿部和幸1
 
1 農業・食品産業技術総合研究機構果樹茶業研究部門リンゴ研究拠点
020-0123 岩手県盛岡市下厨川
2 地方独立行政法人青森県産業技術センターりんご研究所
036-0332 青森県黒石市牡丹平
3 農業・食品産業技術総合研究機構果樹茶業研究部門
305-8605 茨城県つくば市藤本

<研究内容>
 リンゴ黒星病に対して抵抗性を示すリンゴを育種する際の基礎的知見を得るため,レース1~6までを判別可能な判別寄主を用いて,農研機構果樹茶業研究部門リンゴ研究拠点(岩手県盛岡市)で発生しているリンゴ黒星病菌のレース判定を試みたところ,当地で発生しているリンゴ黒星病菌はレース1が優占していることが示唆された.次に,‘あかね’が示すリンゴ黒星病に対する抵抗性を担う遺伝的要因について検討した.‘王林’בあかね’のF1集団135個体を供試して,青森県黒石市の農薬無散布圃場において自然発病したリンゴ黒星病の病徴程度を2年間調査したデータを用いてQTL解析を実施したところ,‘あかね’の第17染色体上に,供試集団において寄与率20%と最大の効果を示すQTLが検出された.本QTLに関しては,病徴スコアに与える影響は寄与率5%と小さいながらも,‘王林’の対立遺伝子も抵抗性に関与していることが示唆された.本QTLについて,Apple 20K SNP Arrayに搭載されているSNPマーカーの遺伝子型を利用して,‘あかね’の血縁品種における抵抗性型QTL対立遺伝子の遺伝を検討したところ,抵抗性型QTL対立遺伝子の由来は‘Worcester Pearmain’であることが判明した.

<授賞理由>
 リンゴにおける重要病害の一つである黒星病抵抗性の育種は,我が国のリンゴ栽培において重要な課題である.本論文は,リンゴ黒星病圃場抵抗性を示すと考えられる‘あかね’とのその後代を用いてQTL解析を行い,リンゴ黒星病に対するQTLを同定しその近傍SSRマーカーを見いだしたことで,マーカー選抜による抵抗性品種育成の可能性を示した.果樹を材料として解析集団の育成,栽培,形質の調査など長い時間と労力を要する研究であるが,適切な試験設計と十分なデータ収集により充実した解析を行い上記の成果を得た本論文は,園芸科学における学術性の高い論文である.


     

 

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