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村松 嘉幸(むらまつ よしゆき)
日本大学生物資源科学部付属農場 技術職員 2008年3月:日本大学大学院生物資源科学研究科博士前期課程修了 2008年4月~2011年3月 片倉チッカリン株式会社勤務 2011年4月~現在:日本大学生物資源科学部付属農場技術職員(花き担当)
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温室の暖房には主に重油燃焼式温風機が使用されており,原油価格等の変動により暖房コストは大きく変動する.夏季の高温対策として,細霧冷房やヒートポンプ冷房が一部で導入されているが,コストや冷却効果の面から課題が多い.また,既存の局所温度制御技術は汎用性に乏しい.そこでは,本研究では様々な品目に適用でき根圏を加温・冷却する根圏環境制御装置(New Root-zone Environmental Control System, N.RECS)を開発し,この装置の花き生産への利用について検討した.
【研究のポイント】
●N.RECSは発泡スチロール製栽培槽,アルミ製熱交換パネルと空気熱源式ヒートポンプ冷温水製造装置から構成され,気温が約10℃の時に根圏温度を24℃に加温,気温が35℃の時に根圏温度を20℃に冷却できる性能を持つ.
●この装置を用いて,冬季に従来法より夜温を低く抑えて根圏を加温すると,インパチェンス,矮性ダリア,ゼラニウム,球根ベゴニアなどの鉢物と切り花ガーベラの生育・開花が促進され,暖房コストを約30%削減できた.
●夏季において高温耐性の低いフクシアやローダンセマムを無冷却で栽培すると約半数の株が枯死したが,根圏冷却により全ての株が健全に生育した.また,根圏冷却はミニシクラメンの生育・開花を促進した.
<本成果により,N.RECSは暖房コストの削減と高温対策に有効であり,様々な品目に適用できることが実証され,今後花きの生産性向上と省エネルギー化に大きく貢献するとともに,野菜苗やイチゴなどの様々な品目における新たな局所温度制御技術としても発展することが期待される.>