学会賞

園芸学会賞 花きの収穫後生理に基づく品質保持技術の開発に関する研究

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市村一雄(いちむら かずお)

博士(農学)

名古屋大学大学院農学研究科において博士号取得の後

1992年:農林水産省入省野菜・茶業試験場 花き部

2001年:独)農研機構花き研究所 生産利用部

2010年:独)農研機構花き研究所 研究管理監

2014年:独)農研機構花き研究所 所長

2016年:国研)農研機構野菜花き研究部門 花き研究監

2020年:福花園種苗株式会社 美里農場

 花きにおいて日持ちは重要な品質構成要素である.そこで,品質保持の鍵と考えられる糖質,エチレンならびに能動的な死の過程であるプログラム細胞死(PCD)に着目し,研究を進めた.

【研究のポイント】

●糖質に関しては,植物に普遍的に存在する代謝糖質以外に,バラ,カーネーション,トルコギキョウ,デルフィニウム,シバザクラ,スイートピーなどにおいて,それぞれに特異的に含まれる糖質を同定し,代謝糖質として機能していることを明らかにした.糖質の細胞内分布を解析する手法を開発し,バラなどでは糖質が液胞に蓄積して浸透圧の上昇に寄与し,細胞肥大に関与することを明らかにした.

●エチレンに関しては,トルコギキョウ,リンドウ,カンパニュラなど多くの花きにおいて,花弁の老化がエチレンにより制御されていることを明らかにした.またトルコギキョウなどの花きにおいて,受粉により老化が促進され,その現象にはエチレンが関与していることを見出した.さらに,デルフィニウム萼片の脱離には花托,ハナスベリヒユ花弁の老化には雄蕊が生成するエチレンが重要な役割を果たしていることを明らかにした.

●アサガオ,カーネーションなど,多数の花きのPCD機構を解析し,PCDには核が分裂するタイプと核内でクロマチンが分裂するタイプが存在することを見出した.さらに,エチレンに非依存的な老化特性を示すアサガオではPCDを制御する遺伝子を特定した.

●上記の基礎的な研究成果に基づき,バラ,トルコギキョウ,ダリア,スイートピー(図)など多数の品目において,品質保持期間延長に有効な薬剤処方を明らかにした.また,湿式輸送と品質保持剤を組み合わせた品質保持技術も開発した.開発した技術は生産,流通,小売および消費の各段階で実用化されている.

                                                                                                                                 

図 糖質処理がスイートピー切り花の日持ちに及ぼす影響

糖質は呼吸基質および浸透圧調節物資として機能し,エチレン阻害剤処理との組み合わせによりエチレン阻害剤単独処理よりも日持ちが延びる.

品質保持検定開始後14日目のスイートピー,左:対照,中:STS(エチレン阻害剤)短期間処理,右:STS短期間処理後,グルコースと抗菌剤を連続処理

              

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