学会賞

園芸学会年間優秀論文賞 園芸学研究 23(2): 81-90.

園芸学研究 23(2): 81-90.

ブドウのマスカット香形質に連鎖する第5連鎖群SSRハプロタイプ

河野淳・尾上典之 ・東暁史 ・佐藤明彦 

 

農業・食品産業技術総合研究機構果樹茶業研究部門 

739-2494 広島県東広島市安芸津町

 

<研究内容>

代表的なブドウ香気の1つであるマスカット香の遺伝には複数の遺伝子座が関与するとされるが,過去になされた複数のQTL解析で共通して第5番連鎖群に主要なQTLが検出されている.そこで,本QTL領域の4つのSSRマーカーNifts5-50910,Nifts5-50929,Nifts5-50937,VVII52により,国内で育成されたマスカット香品種を含むブドウ36品種・系統の遺伝子型を解析したところ,すべてのマスカット香品種が1つのSSRハプロタイプ(LG5-Hap1)を保有していた.このハプロタイプは‘マスカットオブアレキサンドリア’から‘ネオマスカット’,‘甲斐路’を経由し‘白南’から‘シャインマスカット’へ遺伝していた.このLG5-Hap1を保有する個体は,既に報告されているマスカット香と連鎖するCAPSマーカーもマスカット型であった.次に,農研機構で育成された75組み合わせによる交雑実生個体145個体をマスカット香保有個体群と非保有個体群の2群に分割し,それぞれの群でハプロタイプ保有率を比較したところ,LG5-Hap1保有率はマスカット香個体群で有意に高く,毎年安定してマスカット香を発現する交雑実生個体は常にこのハプロタイプを保有していた.果実香気がマスカット香となるには複数の座の関与が不可欠であるが,第5連鎖群のQTLに関しては既存のCAPSマーカーとともにLG5-Hap1に示されたSSR多型もDNAマーカーとして利用することができる.

<受賞理由>

ブドウのマスカット香は品質を特徴づける重要な形質であり、連鎖するSSRハプロタイプを特定し、品種育成に利用できるDNAマーカーを作成することが必要とされていた。著者らは複数の報告で共通している第5連鎖群のQTLに着目し、すべてのマスカット香品種が1つのSSRハプロタイプ (LG5-Hap1)を保有しておりDNAマーカーとして利用できることを明らかにした。これらの知見は、マスカット香の遺伝的要因の解明と、ブドウ育種の効率化に今後大きく貢献すると考えられる。よって、本論文は園芸学において学術的に優れた論文である。

<研究概要>

 

 

図. LG5-Hap1を保有する品種とその親品種からなる系統図.

灰色はLG5-Hap1以外のハプロタイプ,緑色がLG5-Hap1保有を示す.本図を構成する品種・系統は,LG5-Hap1のヘテロ接合型あるいは非保有型のみであり,ホモ接合型品種・系統はない.点線で囲った品種は本研究の遺伝子型解析に供試できなかった品種.

 

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