学会賞

園芸学会年間優秀論文賞 Hort. J. 93(3): 216–223.

Hort. J. 93(3): 216-223.

Inhibition of Malformed Incurved Flowers in the Cut Rose Cultivar ‘Yves Piaget’ by Methyl Jasmonate Spray Treatment of Flower Buds before Harvest

Rei Kaneeda1, Yuri Kanno2, Mitsunori Seo2, Keith Hardie3 and Takashi Handa3

1Graduate School of Agriculture, Meiji University, Kawasaki 214-8571, Japan

2RIKEN Center for Sustainable Resource Science, Yokohama 230-0045, Japan

3School of Agriculture, Meiji University, Kawasaki 214-8571, Japan

<研究内容>
 生産量の多い芳香性バラ切り花品種‘Yves Piaget’では,花弁先端部が向軸側に湾曲して奇形になることが多く,正常な開花が妨げられている.これらの奇形花弁は正常な開花を妨げるだけでなく,花の香りを弱めるため,この品種の切り花品質を著しく低下させ,切り花の損失を増加させる.このような奇形花をインカーブ花と呼ぶ.これまで,ジャスモン酸(JA)が花弁の成長に影響を与えることが報告されている.そこで,収穫前花蕾の生育中に外因性ジャスモン酸であるジャスモン酸メチル(MeJA)を適用することにより,インカーブ花の発生数を制御することを試み た.花が開くまで,花蕾に MeJA 散布処理を適用した.(1) 100 μM MeJA 散布区,または(2)対照としての脱イオン水散布区の2処理区を設けた.100 μM MeJA 散布処理により,インカーブ花の発生率が少なく,インカーブ花弁も少なく,最大花径と雄しべの長さは対照よりも大幅に増加した.さらに,100 μM MeJA 散布処理により,商業的収穫段階から満開までの日数が延長する傾向があり,満開花の最大花径が大幅に増加した.また,各花の発育段階における正常な花と湾曲した花の花びらの内因性植物ホルモン含有量も分析した.その結果,開花初期のインカーブ花の 花弁は,正常花に比べてインドール酢酸(IAA)含量が高く,JA/ジャスモノイルイソロイシン(JA-Ile)含量が低いことが示された.特に,インカーブ花の花弁中におけるJAおよびJA-Ileの含有量は,通常の花の約 4 分の 1 であった.これらの結果は,IAA,JA,JA-Ile が内湾曲花の発生 に関与している可能性を示唆した.最後に,収穫前の花蕾への 100 μM MeJA 散布処理は,収穫時のインカーブ花を 抑制することで切り花の損失を軽減する効果と,最大花径 の増大や収穫後の満開までの日数の延長による切り花品質の向上に効果があることが明らかになった.

<授賞理由>
 バラ切り花においてインカーブが発生は,切り花品質を著しく低下させる.本研究では,ジャスモン酸メチル(MeJA)散布によりインカーブ花の発生率が軽減できることを明らかにした.また,内因性植物ホルモン含有量を解析から,インドール酢酸(IAA),ジャスモン酸(JA)/ ジャスモノイルイソロイシン(JA-Ile) が、バラのインカーブ花の発生に関与している可能性があることを示唆した.本研究成果は,バラの切り花品質の向上に新たな可能性を提供する実用的な研究成果である.

<研究概要>

 図.インカーブ花の開花ステージ・発生要因と収穫前花蕾へのジャスモン酸メチル散布処理によるインカーブ花の抑制

 

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