学会賞

園芸学会年間優秀論文賞 園芸学研究 21(3): 287-297.

園芸学研究 21(3): 287–297.

満開期における植物成長調整剤処理の違いが ブドウ‘シャインマスカット’の

成熟期の果粒物性 および細胞壁構成成分に及ぼす影響

笈田幸治 1 2・松井元子 3・村元由佳利 4・板井章浩 1

 

1 京都府立大学大学院生命環境科学研究科 619-0244 京都府相楽郡精華町北稲八間大路

2 丹後広域振興局農林商工部丹後農業改良普及センター 627-8570 京都府京丹後市峰山町

3 京都府立大学大学院生命環境科学研究科 606-8522 京都市左京区下鴨半木町

4 京都府立大学生命環境学部 606-8522 京都市左京区下鴨半木町

 

<研究内容>

  シャインマスカットは、味だけではなく、皮ごと食べられることが消費者に受け入れられていることから、皮ごと食べやすさという品質は重要と考えられる。しかし、これまで、無核化処理時のGA3処理が果肉を硬くする報告はあるが、皮ごと食べやすさ自体を評価した知見は少ない。そこで本研究では、無核化処理で施用する満開期CPPU処理濃度と2回目GA3処理の有無との組合せが,‘シャインマスカット’の皮ごと食べやすさに及ぼす影響を評価するため,果粒の物性および植物細胞壁構成成分を調査した.なお、物性分析は,果粒全体の貫通試験に加え,果皮と果肉の接着力の強さを示す難剥皮性を調査した.また、植物細胞壁の成分分析は果粒を果粒中央部の果肉,果皮周辺部の果肉,果皮の3 部位に分けて行った.果粒全体の物性調査の結果、満開期のCPPU 処理濃度を5 ppm以上に高めると,皮ごと食べやすさが損なわれる評価となったとともに,果皮および果皮周辺部果肉のセルロース含量に増加がみられた.また,満開10日後の2 回目GA3処理は、果粒を硬くするとともに,剥皮しにくくする結果となった.また、 2 日目GA3処理によって、果皮周辺部果肉のNa2CO3可溶性ペクチン画分のウロン酸およびKOH 可溶性画分(ヘミセルロース画分)の全糖含量が増加した.このことから,2 回目GA3処理によるNa2CO3可溶性ペクチン様物質およびKOH可溶性全糖含量の増加が,果肉を硬くするとともに,果皮と果肉の接着力を高めたことが考えられた.これらの結果から、GAおよびCPPU処理は果粒の細胞壁構成成分に影響し,皮ごと食べやすさを含む果粒のテクスチャーを変化させることを明らかにした。

<受賞理由>

シャインマスカットは皮ごと食べられる特性が消費者に評価され栽培面積が拡大しているが,「食べやすさ」は評価が難しい項目であった.著者らは果実の物性や細胞壁構成成分に着目し,皮ごとの食べやすさは果皮と果皮周辺部果肉のセルロース部分や細胞壁構成成分が関与していることを明らかにし,「食べやすさ」の評価方法を構築した.シャインマスカットの無核果のための2回目のGA処理は果肉を硬くし,果皮と果肉の接着力を高めると推察した.この研究は,今後,果実等の物性や食べやすさの研究を行う上での基礎的知見であり,園芸学において学術性の高い論文であると言える.

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