学会賞

功労賞 果樹の盛土式根圏制御栽培法による早期・超多収技術の開発

 果樹は永年性作物であり,一定の年数が経つと収量・品質が低下してくるため改植が必要となりますが,改植後の土壌病害・いや地症状や長い未収益期間などの問題があり,全国で栽培面積の減少が進み産地の維持が難しくなっています.そこで,これらの課題を総合的に解決するため,遮根シートの上に培土を盛土し地面から隔離することで土壌病害やいや地を回避するとともに,樹体をコンパクトにすることで密植による早期多収が可能な新たな栽培法「盛土式根圏制御栽培法(以下,根圏栽培)」(特許公開2005-204662,特許第928932号)を開発しました.

 本システムは,遮根シートにより地面と隔離し,ニホンナシでは培土量150 Lの盛土に苗を植付け,樹齢,生育時期ごとに測定した吸水量に基づき,樹体の成長に合わせて設定した灌水を行う栽培方法です.培土を盛土にすることで滞水による湿害の発生がなく,培土量,灌水量および施肥量などにより樹勢を制御することができます.灌水方法としては,1回当たりの灌水量を少なくし,生育時期ごとに1日の必要量を数十回に分けて与える点滴灌水法が基本であり,植物の生育に合わせて養水分調節を行います.

 ニホンナシにおける根圏栽培では,Y字樹形で慣行(地植え平棚栽培)の10倍の栽植密度とし,新たに開発した「二年成り育成法」により定植2年目から結実し,3年目に慣行の成園並,5年目には約2倍の収量となります.定植から5年間の累積収量は慣行の8.5倍と極めて高く,早期多収が可能となります.また果実は,果重が大きく果実糖度も慣行より1%以上高くなるなど,高品質です.なお,ブドウなど他の樹種においても,本技術の早期多収性が確認されています.

 導入した生産現場でも,樹体生育,果実品質および収量が栃木農試の成績と同等以上となり,経営面では,初期投資が大きいものの,収穫開始が早く多収であるため,所得が導入前の水準に回復するのが早く,その後の累積所得の増加が慣行に比べ格段に大きくなるなど,根圏栽培は導入効果の高い栽培法であることが実証されています.

現在は,ニホンナシのほか,モモ,オウトウやブドウなどで導入が進んでいます.さらに,コンパクトな樹形を生かし新品種導入に取り組む事例など,全国の果樹産地約30haに本技術の導入が進み,産地振興に貢献しています.

  

(写真左)なしの根圏制御栽培法(写真中央)果樹類の根圏制御栽培法の模式図(写真左)ハウスオウトウの導入事例

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