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園芸学研究 24(3): 195-209. トマトF1品種間交雑に由来する組換え型自殖系統群を 学習集団兼育種集団としたゲノミックセレクションの実践と効果検証 大山 暁男1・山本 英司2・松永 啓3・宮武 宏治3・山口 博隆3・ 布目 司1・福岡 浩之2・岩田 洋佳4・齊藤 猛雄3・林 武司5
1農業・食品産業技術総合研究機構野菜花き研究部門 305-8519 茨城県つくば市観音台 2農業・食品産業技術総合研究機構野菜茶業研究所 514-2392 三重県津市 3農業・食品産業技術総合研究機構野菜花き研究部門安濃野菜研究拠点 514-2392 三重県津市 4東京大学大学院農学生命科学研究科 113-8657 東京都文京区 5農業・食品産業技術総合研究機構農業情報研究センター 105-0003 東京都港区 |
<研究内容>
オランダの多収F1品種‘Geronimo’(P1)と日本の高品質F1品種‘桃太郎8’(P2)間の交雑に由来する組換え型自殖系統群(GM RILs)を育種母集団としたゲノミックセレクション(GS)の試行を行い,糖度と良果収量の2形質の同時改良を試みた.RILsの両親(P1およびP2)のゲノム解読データを元に,4,323個のゲノムワイドマーカーセット(GMRIL_4K)と,選抜用の384個のマーカーセット,GS_384をまず開発した.GMRIL_4K とGM RILsの表現型に基づいて統計モデルを構築し,糖度と良果収量のゲノム育種価(GBVs)に基づいて,GMRILsから7つの親系統を選択した.これらの系統をラウンドロビン方式で交雑することにより,GSを開始した.GS_384遺伝子型から予測されたGBVsに基づく循環選抜を行い,循環選抜1回の世代(R1F2)および循環選抜3回の世代(R3F1)について,GBVsと表現型値を評価した.その結果,世代の進行とともにGBVsの上昇が認められ,最終的に,糖度は‘桃太郎8’並みで,良果収量は‘桃太郎8’を超える表現型値を示す系統が育成された.従って,今回用いたGSモデルによる選抜は,トレードオフの関係にある2つの形質の同時改良に有効であることが示された.
<受賞理由>
トマトにおいて,糖度と収量性の両立および育種年限の短縮は極めて重要な課題であり,量的形質の改良に有効なゲノミックセレクション(GS)を実育種に導入し,その有効性を検証することが必要とされていた.本研究では,日欧の高品質・多収品種間の交雑に由来する組換え型自殖系統群(GM RILs)を対象にGSモデルを構築し,糖度を維持しつつ収量を向上させた優良系統の選抜に成功している.また,予測精度や世代短縮効果の解析を通じ,実際の育種プログラムにおけるGSの有効性を実証した.特に,実育種集団をそのままモデル構築に用いて高精度な選抜を実現した点が優れており,表現型計測の省略可能性や普及に向けた課題まで明示した点も,従来手法を代替し得る実践的指針として高く評価できる.本研究は,園芸作物におけるGSの実装に向けた重要な知見をもたらし,今後の効率的なトマト育種に大きく貢献することが期待できる.よって,本論文は園芸学において学術的に優れた論文である.
<研究概要>
