学会賞

園芸学会年間優秀論文賞 園芸学研究 24(2): 177-184.

園芸学研究 24(2): 177-184.

ブドウ‘巨峰’における日焼け果および小果梗褐変の発生条件の解明と対策

東 大介,山本 岳,大竹 敏也,上林 義幸,坂野 満

 

愛知県農業総合試験場  

480-1193 愛知県長久手市

 

<研究内容>

地球温暖化による平均気温の上昇により,極端な高温の発生回数と強度は増加している.国内においても真夏日や猛暑日の日数が増加傾向にあり,今後もこの傾向は続いていくと予想されている.こうした状況下,ブドウ栽培においては果実の高温障害の増加が懸念されている.しかし,‘巨峰’における高温障害の発生条件は明確となっていないため,発生条件の明確化および効果的な対策の検証を目的に試験を実施した. 最初に,症状の再現を目的に恒温機を用いた加温処理を行った.その結果,果房表面温度が39.1~40.0°Cから日焼け,42.5°Cから小果梗褐変の症状が再現され,果房表面温度の上昇がこれらの障害を引き起こすと考えられた.また,着色始期付近を境に各障害の発生率が低下したことから,ブドウ果実が高温に対する耐性を向上させたことが考えられた.そのため,対策の検討には生育時期を十分考慮する必要があると示唆された. 次に,圃場において経時的な果房表面温度のモニタリングを行った結果,同温度は気温など周辺環境と連動し,直射日光などによる上昇が高温障害を発生させ,特に47.5°C以上のような極端な高温となる条件で発生が増加することが明らかとなった.そのため,傘資材の設置やLAI(葉面積指数)の上昇による直射日光の遮蔽を試みた結果,果実品質を低下させることなく果房表面温度の上昇が抑制され,高温障害の発生も軽減された.以上のことから,傘資材の設置やLAIの確保など果房表面温度の上昇を抑制することが高温障害の発生防止に有効であると示された.

<受賞理由>

近年の地球温暖化に伴う夏季の高温は,ブドウの日焼け果等の発生による品質低下を招く喫緊の課題であるが,その詳細な発生条件は未解明であり,実験を通じた要因解明と簡易かつ有効な対策の確立が必要とされていた.本研究では,‘巨峰’を用いた加温実験および圃場試験を通じて,日焼け等の障害が発生する具体的な温度条件と耐性向上時期を特定している.さらに,傘資材の設置やLAI(葉面積指数)の上昇が果房表面温度の抑制に有効であることを実証し,高温障害に対する具体的な対策とその学術的裏付けを明らかにしている.実験と圃場試験の併用により発生条件と対策を体系化した点は秀逸であり,慣行管理に即した実効性の高い適応策を提示した点も高く評価できる.本研究の成果は,今後さらに深刻化すると予想される地球温暖化への現実的な適応策として,ブドウの安定生産に大きく貢献することが期待できる.よって,本論文は園芸学において技術的に優れた論文である.

<研究概要>

 

 

 

 

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