農研機構における組織的なニホンナシ育種は、黒斑病抵抗性を有する果実品質が優良な品種育成を目的として1935年から開始されました。その成果として、1959年に公表された早生の「幸水」、1974年に公表された中生の「豊水」が広く普及し、現在、両品種で全栽培面積の2/3を占めています。一方、1970年代後半から、観光農園や宅配便を利用した直売方式が拡がり始め、これに伴って「豊水」に続いて収穫出来る優良品種への要望が高まりました。これに応える品種の一つとして育成した品種が「あきづき」です。「あきづき」は、162-29(新高×豊水)と「幸水」との交雑実生から選抜され、特性や普及の可能性を評価する系統適応性検定試験を全国34都県の研究機関の協力を得て実施し、その結果、外観や果実品質における優秀性が認められ、1998年に品種として公表されました.「あきづき」は、黒星病抵抗性を有することに加え、果実品質も高く、肉質が良好であるとともに「幸水」や「豊水」にはない甘酸のバランスを有することから、これら2品種と同等以上の高い評価を得ています。また果実外観が非常に優れ、豊円形で月のように見える特徴的な形が品種名の由来になっています。近年生産者の高齢化等によって従来のニホンナシ主要品種の生産が急速に減少する中で、「あきづき」の栽培面積は2003年に統計に表れて以降ほぼ一貫して増加しており、現在は「幸水」、「豊水」、「新高」に次いで4位になっています。一方、四大市場での果実販売額は「幸水」、「豊水」に次いで3位となっており、国内のニホンナシ産業に貢献しています。
受賞成果は、受賞者以外にも全国の公立試験研究機関や普及機関をはじめ多くの方のご協力を得て実現したものです。関係者各位に心より感謝申し上げます。
