学会賞

園芸学会年間優秀論文賞 園芸学研究 23(1): 37-44.

園芸学研究 23(1): 37-44.

白色バラ’アバランチェ’の高温期の花色変化における発生条件の解明と対策

犬伏加恵1・山内雄大2・上田浩史2・保富正行1・二村幹雄1

1愛知県農業総合試験場 

346-0037 480-1193 愛知県長久手市大字岩作

2農業・食品産業技術総合研究機構野菜花き研究部門

346-0037 514-2392 三重県津市安濃町

 

<研究内容>

  白色スタンダードバラの主力品種‘アバランチェ’が高温期にオレンジ色を呈する現象に対し,発生条件の解明と対策の検討を行った.花色変化の原因となる色素はβ-カロテンであることを特定し,様々な条件で収穫および管理したバラの花弁のβ-カロテン含量を測定した.その結果,25°C 24時間の水あげでは変色しなかったが,3°C 24時間の水あげを行うとその後の25°Cでの観賞中にβ-カロテン含量が高まった.収穫直後に20°C 4時間以上の予措を行ってから3°Cの冷蔵庫に入れるとβ-カロテン含量は0.1 mg・100 gFW–1となり,見た目で変色を感じないレベルまで低下した.また,収穫時刻については,日の出後2時間および4時間に収穫した‘アバランチェ’はβ-カロテン含量が高く,日の出前2時間および日の出後10時間では低かった.さらに,生産現場での収穫および出荷を想定して,収穫時刻と冷蔵庫での水あげ時間の長さを変えて花色変化を調査した結果,16時頃収穫の場合にβ-カロテン含量が低くなるなど上述の結果を支持するものであった.栽培期間中の気温は,23°C一定以上でβ-カロテンが検出され,高い温度ほど含量が高くなった.以上から,栽培環境の制御による対策は現実的ではなく,収穫時刻の調整や収穫後の水あげ温度の変更による対策を推奨する.

<受賞理由>

白色スタンダードバラの主力品種‘アバランチェ’において、高温期に淡いオレンジ色を呈する現象がロス率を高めるため、発生要因の解明と防止法の確立が必要とされていた。著者らは高温期の花色変化の原因色素がβ-カロテンであることを特定し、20˚Cで4時間以上の予措が花色変化抑制に効果的であり、‘アバランチェ’の商品性を低下させない対策になることを明らかにした。特に切り花において収穫後の温度管理のみで花色が変化することを示した点は、花き生産上有用な知見である。よって、本論文は園芸学において技術的に優れた論文である。

<研究概要>

第1図上 バラ‘アバランチェ’の高温期の花色変化

左:変色したバラ,右:変色のないバラ

第1図下 花弁の変色部位

1:変色なし,2:花弁基部変色,3:花弁上部変色,4,5:花弁左右縁部変色,6:花弁基部濃く変色,7,8:花弁全体変色

 

第8図 収穫直後の水あげ温度および時間がバラ‘アバランチェ’の花弁におけるβ-カロテン含量に及ぼす影響

z Tukeyの多重検定において異符号間に5%水準の有意差あり

第10図 収穫時刻がバラ‘アバランチェ’の花弁におけるβ-カロテン含量に及ぼす影響

z Tukeyの多重検定において異符号間に5%水準の有意差あり

y 横軸は12時間日長の人工気象器内で明期開始時間を0 hとした場合の時間を示す

 

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