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Hort. J. 93(3): 242-250. A Large-scale Selection of a Recombinant Haplotype Leading to Columnar Tree Shape with Improved Storability in Apple (Malus × domestica Borkh.)
Shigeki Moriya, Taku Shimizu, Kazuma Okada, Ayato Hori, and Yutaka Sawamura
Institute of Fruit Tree and Tea Science, NARO, Morioka 020-0123, Japan |
<研究内容>
リンゴのカラムナー樹形は高密植栽培やロボット利用を通した省力化に適性がある形質として注目されている.近年の研究により,リンゴ第10染色体にはカラムナー樹形を制御する遺伝子Coと果実の日持ち性と肉質とを制御するMdPG1が共に座乗していることが明らかにされている.In silico 解析により両遺伝子の物理距離,および遺伝距離を推定し,さらに,カラムナータイプリンゴ育種素材の遺伝子型を調査した結果,これら2 種の遺伝子の強い連鎖関係に起因している望ましくないハプロタイプ(カラ ムナー樹形を誘起するCoと日持ち性を悪くする MdPG1-3対立遺伝子を共に持つ)がほとんど全ての育種素材において維持されていることが明らかにされた.そこで,この限界を打破するため,減数分裂時の組換えによって生じた有用なハプロタイプ(Coと日持ち性を良くするMdPG1-2対立遺伝子を共に持つ)を有する個体を得るための大規模マーカー選抜を実施した.5 つの交雑組合わせからなる約15,000の交雑実生個体のマーカー選抜を実施したところ,目的のハプロタイプを有する80個体が選抜された.これらの個体は,カラムナータイプリンゴの育種において果実品質の優れた新品種を実現する素材としての価値が高いと考えられる.
<授賞理由>
省力化に有利であるカラムナータイプのリンゴ品種では,カラムナー樹形を制御するCo遺伝子が果実の貯蔵性に関わる遺伝子(MdPG1)と強く連鎖しているため、果実の日持ち性に問題がある.カラムナー樹形をもつ遺伝資源の多くは,果実貯蔵性が乏しいMdPG1-3アリルと連鎖したハプロタイプとなっている.本研究では,果実貯蔵性が良いMdPG1-2アリルに組み換わったハプロタイプをDNAマーカーにより探索し,計80個体のCo-MdPG1-2型の実生を選抜することに成功した.本研究におけるゲノム情報を利用したin silico解析は,リンゴ育種の効率化に貢献する実用性の高い成果である.
<研究概要>

図.カラムナー性のリンゴの日持ち性の改良を行うため,‘きたろう’(通常型樹形)×8-7573(カラムナー個体)に由来するF1集団から,減数分裂時の組み換えによってMdPG1の不良日持ち性対立遺伝子MdPG1-3を持たないカラムナー個体(表のDecision行が“S”とマークされた15番の個体)を判別し,選抜した.約15000個体を供試して,このような個体を80個体選抜することができた.